「う……」

「どうした?」



人生でかいだことの無い下水道の、
いや犠牲者のにおいにむせそうになる。

「すぐ慣れるさ」


私が口元を押さえて顔を歪ませる姿から察した先輩は振り向くだけで、
歩くのをやめずに一言呟く。

そして、

「ここならどこにでも吐いていいぞ」

と後姿で冷笑する。



それは、地上からきた私を皮肉っているのか、それとも自虐か、
はたまた、これから付き合うための気遣いから漏れた言葉なのか、
初対面の彼のことを私には分からない。