「結子先輩、何か飲みますか?」
「いらない」
「そうですか」


原因不明の重苦しい空気が漂う店内。可愛いぬいぐるみも何だか今日は憎たらしい。


別に早坂彼方が嫌いな訳ではない。むしろいい人なんだろうなって好意を持ってもいい。


持ってもいいのに、

何故か私の心の中では危険サインが転倒しまくっていた。




この人は危ない!仲良くなったらやばい!
みたいなね。



「あのさ………今日はわざわざありがとうね」
「ああ、別にかまいませんよ」



沈黙だけは避けたいから適当に話題を振ってみるが、失敗。私には会話スキルというものがないことをすっかり忘れていた。



何をしたらいいのか分からず、視線を泳がしていると頭の上からクスッと笑い声が聞こえた。