ちゃんと聞こう...。 「ごめん、もう一回いい?」 「ったく...だからここは、この公式を使って...」 こめかみを触りながら ペンを動かして教える桐野くん。 トクン...トクン... ダメだぁー… 雰囲気違うせいかも... いつも以上に 心臓がうるさい……。 「なに?」 視線に気づかれたっ。 「ご、ごめん続けて?...」 ここから先、 あたしは一度も 彼の方を見ることなく説明を受けた。 一度でも目が合えば 体中が熱くなって 心臓が保てなくて 集中できなくなってしまうから。