その時、ドアをノックする音がした。

ドアへと意識を集中させる。


「悟。あたしだけど」


俺は立ち上がり、ドアへと近付く。

ドアノブを回して、ドアを開けた。


「入れよ」


碧依を招き入れ、二人で腰を下ろした。

俺は何も言わずに、碧依から視線を逸らしていた。


「あのね、昨日の返事なんだけど‥‥」


言いにくそうに、碧依は口を開いた。

俺は表情一つ変えずに相槌を打った。


「あのね‥‥‥悟の気持ちは嬉しいの。嬉しいんだけどっ‥‥」


碧依の目から零れ落ちる涙。

俺を思って涙を流す碧依を、愛おしく思うと同時に、これから出る言葉を予想して、切なくもなった。