奈々ちゃんはハァ~と大きなため息をついている。


受験って、やっぱ深刻だよね。


推薦ですんなり決まっちゃった私が言うのもなんだけど、奈々ちゃんや周りの様子を見るとやっぱりそう思っちゃう。



「凛。笹野のことはどうするの? もう、今日しかチャンスないよ」


奈々ちゃんの言葉に私はピクンと反応してしまう。


奈々ちゃんは私の目をじ~っと見つめてくる。


その目には一点の曇りもない。


綺麗で真剣な目。


私のことをちゃんと考えて言ってくれている。


「わかんない………。言わなくちゃって思う。気持ち伝えられたらって。だけど、そう思うと緊張しちゃって………」


「その気持ちもわかるけど………そんなに時間もないんじゃない?」


奈々ちゃんに言葉を返すことができない。


私は黙り込んでしまう。


そうなんだ。


私には時間がない。


今日が終われば学校には1ヶ月後の卒業式まであと2日しか来ない。


それも、明日から休みに入り、卒業式前の2日間来るだけ。


言うならば、今日しかないということ。



 「凛………。後悔だけはしないでね。あの時、気持ちを伝えておけば………。そう思う後悔だけはしないように、よく考えな。高校生と言う期間は1回だけでもう、戻ってこないんだからね」


「うん………」


「じゃあ、凛。あたし、もう帰るけど、どうする?」


私は少し考えた後。


「私は、もう少し残ってる。もう少し考えたいから」


私の答えに、奈々ちゃんは寂しく微笑んで「わかった」と小さく呟いた。






 教室を出る時に奈々ちゃんがもう1度心配そうにこちらを振り返った。


「大丈夫だから。奈々ちゃんは受験のことだけ考えてて。何かあったら、絶対連絡入れるから」


「………じゃあね。凛」


「うん。ばいばい」