一番上の引き出しには煌びやかな宝石が並べてあった。
彼氏に買ってもらったものだろうか。
ちょっともらおっかな。
あたしは大きなトパーズのネックレスを拝借した。
二段目の引き出しを開けると請求書がぎっちり詰まってた。
携帯代くらい払えよ…
チラッと見た後破ってゴミ袋の中へ放った。
ろくな物ないなと最後の引き出しを溜め息まじりで開けた。
するとそこには若い父と母と幼いあたしが笑顔で写ってる写真があった。
背景は海。
どこだろうここ。
手にとり見つめる。
あぁ、これはあたしが幼稚園児の時に行った熱海だ。
抽選かなにかであたしが当てて行ったんだ。
その写真の下からはあたしがクレヨンで描いた母の絵。
あたしが初めて母に宛てて書いた手紙。
そしてあたしが遠足の時に買ってきたキーホルダー。
引き出しの一番奥には古びた封筒があって中を見ると現金100万円ほどはあるであろう札束と
笑顔で母の作ったお弁当を食べるあたしの写真があった。
ハッと気が付くと涙がこぼれ落ちていた。
母はこんなにもこんなにもあたしを愛してくれていたんだ。
最後の引き出しからはあたしに関するものしか出てこなかった。
改めて部屋を見渡す。
先ほどまで嫌々だった景色が色鮮やかに愛おしく感じる。
派手な服もブランドの服も色んな化粧品も全部愛おしい。
写真を抱きしめて泣いた。
涙が止まらなかった。
お母さん、あたしすごい親不孝者だね。
ごめんね…ごめんなさい…
あたしは写真の中の母を見て震えるほど泣き崩れた。
お母さん、ありがとう。
Fin. .
