それだけじゃない。 巧先生が『かな』さんの名前を呼んだ時、私、…苦しかった。 それから、嫌になった。 心が重く沈んだ。 そして、羨ましかったんだ──… 「嘘、なんです……」 「え?」 「萌えたなんて、ウソだったんです」 「……萌え………?」 そうやって自分の心を偽って。 「気付くのが怖かっただけなんです…」 自分を守って。 「本当は、」 知っていたのに。