幸せの残量─世界と君を天秤に─



『かな』


それは巧先生の口から発せられた紛れもない、女の子の名前。


寝ぼけているから、間違えた。


それだけのこと。

だけど、


私の名は呼んでくれたこともないのに。


そんな醜い感情が私を支配した。



「…あ?なんだ、あんたか」



『あんた』

その言葉が私の心臓を、蝕む。



「何か用か?」


「…私は」


あ、駄目だ。


「ん?」


感情が、

抑えきれない───…


「私の名前は………っ!!」