病院を出ると、少しだけ涼しくなった風が私を包む。


夏から秋に移り変わっているのを感じつつ、けれど日射しは相変わらず眩しい。


「亜優美、早くしろ」


「はいはい」


数歩前にいる巧さんから大人気ない要求。

何だかんだ言って巧さんも楽しみにしてるんでしょうか。


「買い物も久し振りです」


「それでも女子高生なのか」


「何ですか、その認識は。女子高生が皆キャピキャピ買い物してると思ったら大間違いなんですからね」


「……キャピキャピって…」


「……笑うならいっそちゃんと笑って下さい」


くっ…巧さんより若い筈なのに何だこの敗北感は。


「……女子高生なう」


「無理矢理使うんじゃない」


むむむむむ……。

いいですよーだ。どうせ私は今時じゃないですもーん。


「…何を拗ねているんだ」


「別に拗ねてなんていませんよーだ」


つーん。


「ったく。……ほら」


そう言って差し出された手。

暫くじっと見詰めていたけれど、そっと手を重ねた。


「ガキ」


「…これで機嫌が直るなんて思わないで下さいよ」


「はいはい」


結局、いつだって私は巧さんに勝つことは出来ないんだ。

何だかんだ言っても巧さんの方が10歳も年上なんだから。


……別に、同い年になりたいわけではないけど。


ただ、埋まらない差を漠然と実感した。