「でも巧がデートだなんて成長したもんだ」


お父さん嬉しい…と泣き真似し始めた裕司先生に私は一体どうしたらいいんでしょうか。

でも、


「ですよねー」


本当、珍しい。


「熱でもあるのかな?」


「でも熱出た時は誘ってくれませんでしたけど」


「じゃあ、何かに触発されたか…若しくは誰かに……」


「…誰かに何ですか」


「いやいや、巧も漸く女の子の気持ちが分かってきたのかもねぇ」


「はあ…」


何だか釈然としない。

まあでも、巧さんがデートに連れて行ってくれると言ったのだから気にしないでおこう。


「で、巧は?」


「外で待っているそうですよー。…と、いうことで…」

ガラッ

失礼します。そう言おうとしたのを遮った扉を開く音。


「……全く。子供じゃないんだから」


確かに。

思わず裕司先生の言葉に同意してしまったのは、開いた扉から入ってきた人のせい。


「もう、待ってるんじゃなかったんですか?……巧さん」


「……遅い」


「えー?そんなことないよねぇ、亜優美ちゃん」


「はい。いつも通りです」


「五月蝿い。亜優美、行くぞ」


「はーい。じゃあ裕司先生、ありがとうございました」


「はいはーい。また入院しないよーに」


「大きなお世話だ」


「こら」


巧さんを軽くたしなめつつ、診察室を後にした。