「──あゆみ」
「巧さん……?」
扉から出てきたのは巧さん。
「何、してるんだ」
「はあ…特に何も」
「………」
やたら凝視されてるなぁ、と思い巧さんの視線を辿ってみると、そこは不良君の頭に乗った私の手。
ああ、そういえば乗せたままだった。
手を退かすと、分からないくらいの変化で満足そうに目を細めた巧さんが近寄ってきた。
「お前、倒れたって…」
「あ、はい。いつもの発作ですから大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃねぇよ」
「……ですよねー」
巧さんの眉間にはいつもよりも皺が寄せられていて。
また心配をかけてしまった…。
「すみません」
「何で謝るんだ」
「…いえ、何でもありませんよ」
微妙に乱れている前髪に。
何も持っていない右手に。
私の為に、急いで来てくれたのかと思うと、何だか。
謝るのも可笑しく思えてきて。
「ありがとうございます」
「……何が」
「さあ、何でしょうねー」
本当、心配性なんですから。
けれどそれが嬉しいだなんて。


