以前、誰かが言った。

本人以外に心の内を知り得る者はいないと。


以前、誰かが背中を押した。

分からないから尋ねるのだと。


――ドクン


そして君は

「知って欲しいんだよ」


「なっ……!?」


たぶん、おそらく。

ただ、覚悟が足りなかったんだ。



―ドクンッ!


「だから……くっ、はあ…ッ!」


突然、胸に痛みが走った。

心臓を鷲掴みにされたような。
思い切り突き放されたような。

そんな感じ。


思わず左胸の制服をギュッと掴んだ。


これは、…発作。


でも、まさか。

薬は…?


薬を求めてスカートのポケットに手をのばしたけれど、そこには何もない。


……教室だ!

っ、ついて…ない。


「はあ…はあッ…!」


乱れる呼吸と霞む視界。


「お、おい…ど…した……」


不良君が何か言っているけれど、聞き取る余裕などない。


揺れる景色。

止まる思考。


そしてそのまま私はコンクリートの上に、倒れた。



閉じる瞼越しに最後に見たのは、燃える様な赤と眩しいくらいの青。



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