突然、温もりが離れた。
「え……巧さん、どこに……」
離れたのは一瞬で、今度は手のひらが温もりに包まれた。
「巧さん?」
「……行くぞ」
「行くってどこに……」
それっきり巧さんの口は閉ざされたまま。
私は巧さんに導かれるままに家を出た。
車に乗せられ、どこかへ向かっている。
窓の外は薄暗く、けれど明かりが途絶えることはない。
ぼーっと窓の外を眺めていると、次第に景色が変わった。
太陽が沈むに連れて辺りは暗くなる。
それに比例するかのように人工の明かりも減ってゆく。
運転している巧さんの横顔をそっと盗み見て、再び窓の外へと視線を戻した。
きっとこの先が巧さんの領域。
それならば、私はただ、身をまかせて。
流れる景色と共に、