――カチャ… 「巧さん……?」 そっと扉を開けると、真っ暗なままで。 昨日のことが頭に過る。 「いないんですかー…巧さぁーん……っ」 リビングの扉を開けて電気を点けようとした瞬間 後ろから、ギュッと抱き締められた。 驚いたけれど、この温もりは知っている。 「巧さん…」 「………」 力が強められる。 「巧さん?」 痛いくらいのその腕が、微かに震えてる。 「……っ、帰って、こないかと思った」 まるで迷子になった子供のようで。 「私はここにいます」 無性に抱き締めたくなった。