幸せの残量─世界と君を天秤に─



見上げたそれは、いつもと変わらない高級マンションなのに。


何故か、酷く空疎なものに見えて。


ああ、そういえば。

こうやって立ち止まったのはいつ振りだろうか。


昨日まで躊躇いなく足を踏み入れていたそこに、何故今日に限って躊躇ってしまうのか。


それは確実に朝の出来事の影響なのだろうけど。


……いつから私はこんなにも臆病になってしまったのか。


他人と距離を置くなんてことは、もう慣れてしまったと思っていたのに。



ほんの数分しか経ってないのかもしれないし、数十分経ったのかもしれない。


暫くそこに突っ立ったままでいたけれど、ずっと居るわけにもいかず。



心なしか重たい足で、小さく一歩踏み出した。