一歩踏み出す度に、近付く気配。


見馴れてしまったこの道も、今だけは違って見えた。


足は止まることなく進むのに。


それに反比例するかのように重くなる心。


…朝の巧さんはどう見ても。


「……はあ」


無意識の内にため息が零れる。


本当は、巧さんに会うのは気まずいけれど。


でも、それ以上に会いたいと思ってしまってる。


まだ怒っているのかは分からない。

いや、そもそも怒っていたのかもあの表情からは読み取れなかった。


けれど確かに、


確かに拒絶の色は見えて。



マンションの前で、足を止めた。