春が来た。

また、新しい年度が
始まるときが来た。



一階から母の私を
起こす声がする。

私の頭の中では、
その音は何の効果も
もたらさず華麗に
スルーされてしまった。


今度は私の部屋の
ドアの前でさっきより
少し大きくなった
声がする。

その声は少しだけ
私の意識を現実に
連れ戻した。


でも、私の眠りは
そう簡単には覚めない。


今まで何度、朝から
母を怒鳴らせてきたか
数えられる数ではない。



ドアが乱暴に叩かれている。

もちろん、私もドアも
全く動じない。

でも意識がだいぶ
現実に戻ってきた。


一瞬、ドアを叩く音が
止んだ。

取り戻された静けさに
再び意識が遠のきそうに
なった、そのとき…



「起きなさいっ!!」


耳元で大声がした。