飲み物を買ったら、ハイお疲れ!かな、と思っていたけど、車に戻って来た時、店長が助手席のドアを開けてくれた。
「じゃ、改めて、お誕生日おめでとう」
日付変わっちゃったけどね、と店長はちょっと残念そうに笑った。
お茶で乾杯。
あたしはドキドキして窒息しそうになった。
ちょっとごめんね、と店長は窓を少し開けて、タバコに火をつけながら言った。
「桃ちゃん、だいぶ手際が良くなって来たね最近。安心していろいろ任せられるよ」
「ホントですか?」
「うん、がんばってるね」
一生懸命やっててよかったーーーー!
あたしは大声で叫びたいのを我慢した。
それからいろいろお仕事の話をしたけど、あたしはどんどん帰りたくなくなった。
店長と二人きり。
いつもは我慢してるけど、やっぱり店長が好き。
スタッフ同士の恋愛は禁止ってなってるけど…。
伝えたいな。
ダメかなあ。
好きって言いたいな。
…まだお酒残ってるなあたし。
それとも店長に酔ってるのかな…なーんてあっはははははは。
「どした?桃ちゃん」
「あ、なんでもないです…」
店長の目は凄く優しくあたしを捉えている。
「気分悪い?」
そう言って店長は、あたしの顔にそっと手を当てた。
店長…。
あたしはうっとりとした気持ちになって、頬に当たる店長の手に自分の手を重ねて、うつむいた。
「どうしたの?大丈夫?」
店長。
そんなに優しくされたら、あたし、我慢できなくなっちゃいます。
「店長」
「ん?」
あたしはうつむいたまま、独り言のようにつぶやいた。
「あたし店長が好きです」
「桃ちゃん」
店長は手を引っ込めてしまった。
言わなきゃよかったな、と後悔が押し寄せたけど、後の祭り。
独り言を続けるしかなかった。
「彼女がいるの、知ってます。店長とつき合いたいとかそういうこと思ってないんです。勝手に好きなだけです。言いたかっただけです」
あたしはぼんやりと落ち込んで行きそうになったけど、
「!」
驚いて顔を上げた。


