翌日閉店後、スタッフ8人全員で、居酒屋に行った。

「桃ちゃん、お誕生日おめでとう!」

みんなで乾杯。

「ありがとう!」

あたしはすごく幸せだなって思った。

店長の隣だし!へへっ。

「桃ちゃん、おめでと」

店長はそう言いながら、大皿から手羽先を取り分けてくれた。

「ありがとうございます」

「桃、これも食べろ」

「桃ちゃん、これも」

いつも厳しい先輩達も、今日はとっても優しくしてくれる。

あれこれと世話を焼いてもらうのが心地いい。

「桃ちゃん、今日は俺の分まで飲んでくれよ」

店長はすっきりした瞳であたしに微笑んだ。

いつも店長は、みんなで飲みに行くときは車を出してくれるから、お酒を飲んでるところを見たことがない。

「ハイ!ありがとうございます!」

早紀が眉間にしわを寄せて、店長をたしなめた。

「桃、お酒弱いから。あんまり飲ませないほうがいいですよ」

「お、そうなのか?」

「あたしですか?大丈夫ですよ、今日で21歳だし!オトナになったから!」

あたしは凄く嬉しくて楽しくて、ついついお酒をたくさん飲んでしまった。



「桃ちゃん…桃ちゃん、起きて」

「う…」

あたしが目を覚ますと、店長のワンボックスの後部座席に横たわっていた。

「あれ…あたし」

店長は運転席から申し訳なさそうに言った。

「ごめん。俺が飲ませすぎちゃったみたいで。気分悪くない?」

あ、そうだ。

あたしあのまま気分が良くなって、寝ちゃったんだ。

「すいません…みんなは」

「俺が家までちゃんと送ったよ。桃ちゃんが最後。途中で起きるかなと思ったんだけど」

「す、すいません!」

あたしはあわてて体を起こすと、家の近くの空き地だった。

家の前は一方通行だらけでややこしいから、いつも送ってもらうときはここまで。

あたしったら、寝ちゃって。

もったいないことしちゃったな。

「喉乾いてないか?自販機で何か飲むもの買って来るけど。水がいい?お茶がいい?」

もうちょっと、一緒にいたい。

「あたしも一緒に行きます、自販機まで」