「近藤です、よろしく。昨日ライブ拝見したよ」
「あ、ありがとうございます!」
一気に緊張する俺と谷川。
太田は、迎えにいってる間にだいぶ話でもしたのか、いつも通りだ。
近藤さんは、
「ま、とりあえず座ろうか」
と言ったあと、谷川の前に置いてあるカップを見て、
「ココアか。いいね、僕もココアにしよう」
と注文を決めていた。
…。
普段着でいいからと言われて俺らはラフな格好してるけど、
近藤さんはスーツを着てピシッとしてるから、すごく力が入っちゃったけど…
今のでなんか力抜けたな。
うまいなあ近藤さん。
オーナーはあきれ顔で、
「おまえ、さっきいちご牛乳飲んでて、今度はココア?気持ち悪くならん?」
とつぶやいていた。
…。
谷川は
「アポロチョコ的組み合わせですね!」
となぜか喜んでる。
ゲッソリ顔の三人をよそに、しばらく近藤さんと谷川は、スイーツの話で盛り上がっていた。
うん、食べ物の嗜好が合うのはいいことだよね…。
甘いもの話にキリのついたところで近藤さんは、ニコッと微笑んで、
「よし、じゃあビジネスの話をしようか」
と切り出した。
長い付き合いだけあって、近藤さんはオーナーと同じ匂いがする。
まだ会ったばかりだけど、俺は近藤さんなら信頼できる、と直感した。
谷川も太田も、同じこと感じてるはず。
「昨日告知してたニューアルバム、どこまで話すすんでる?具合によっては、僕らが立ち上げるところから出さないか?」
近藤さんは俺らを見渡してから、続けた。
「レコ発ツアーで、関東だけじゃなく、大阪、名古屋もいってみない?」
地方かぁ…!すげぇ。
俺らがアホみたいに口をあけているから、近藤さんは少し笑った。
「地方のブッキングはこっちに任せてくれていいよ。もちろん、一緒にやりたいバンドのリクエストがあれば言ってくれていいし」
あるよ、ある!いろいろ!リクエスト!
でも興奮しちゃって言葉にならない。
谷川も太田も、そうみたい。
オーナーは、そんな俺らを見てクスリと笑った。


