「悩める司くん、今日もサツキちゃんで頭いっぱい系?」
谷川はニヤニヤしながら冷やかしてきた。
「恋してる系?」
バカか。
「違う。気持ち悪い顔すんなよ」
どちらかといえば悶々系だよ。
「気持ち悪い?失礼な。俺はTKOの看板男だぜ」
「はいはい、男前男前」
でも女っ気ないんだよね谷川って。
格好よすぎて近寄りがたいんだよ!なんて前言ってたけど、
そういうこと自分で言っちゃうアホなとこがダメなんじゃないかと思う。
好みのタイプは清楚で綺麗でチャラチャラしてない子!とか。
今時いるか?そんなの。
あ。
いるわ。
サツキさん。
ダメ。あの人の世話は谷川じゃできないよ。
「ん?なんだよ司」
谷川はホットココアの生クリームをすくいながら俺を見た。
「あ、いや…。甘いもの好きだねおまえ、と思って」
俺も嫌いではないけど、ココアってアンタ。
「大好き。そうだ、おまえの作ったババロア、めっちゃうまかった!また食べたい」
あ、気に入ってくれた?
「うん…気が向いたら作るわ」
谷川はホクホク顔になった。
「やった!じゃあまたお邪魔するな、おまえとサツキちゃんの愛の巣に」
はぁっ!?
「そんなんじゃないよ!」
「プッ。ムキになるなよ」
ぎゃはははは!と大笑いしている谷川を見て、抹茶色のわさびババロアでも食べさせてやろうかと思った。
「おぅ、今日も仲良くじゃれてるなおまえら」
「オーナー!」
太田と一緒に、オーナーとレコード会社の人があらわれた。
俺と谷川が立ち上がってあいさつしようとしたら、太田がニヤニヤして口を開いた。
「またコイバナ寄りの話でもしてた?」
げっ。
「んなわけないじゃん!ねっ、谷川」
「いやぁ?そんなかんじだったぞ」
もう!絶対おまえわさびババロアだからね!
「今から真面目な話しようってのに…」
俺は恥ずかしいよ。
レコード会社の人は、にこやかに
「いや、バンドメンバーが仲いいってのは大事だよ。特に若いときはね、ファンも喜ぶから」
と言って名刺を差し出した。


