あたしは家に帰ってから、いい気分で肉じゃがを作りはじめた。
司くんが帰ってくる前に、お先に少しワインをいただこう。
…。
コイバナかぁ。
司くん、好きな人…いるのになぁ。
あたしなんかに優しくしてくれるんだもんなぁ。
いいのに別に。
あたしなんかに構ってくれなくても。
…おっと、ダメダメ!
司くん、きっとご機嫌で帰ってくるから、一緒に楽しく飲みたいな。
今日どうだった?なんて聞いてみたりして。
だからあたしは、楽しくならなきゃと思って、どんどんワインを飲んでいたら、
全部カラに…
楽しくなるどころか、思考回路はどんどん暗くなっていくし、
じゃがいもは固いし、
そもそもなんでこんなに浮き沈み激しいの、
司くんのせいじゃん、
酔っ払ってキスしてきたり、
背中流してあーげる、とか意味わかんないし、
こっちはドキドキしたのに本人はペロッと忘れてノホホンとしてるし、
とんちんかんな優しさとかズレた気遣いとかしてきて…
好きな人いるくせに…
司くん…
なんてグルグルしていたら、寝ちゃってた。
司くんに起こされて、なんかゴチャゴチャ言われたから、
頭にきて、
思いっきり絡んでやった。
腹が立ったり悲しくなったり…
自分で意味がわからない。
司くんに、優しく
どうしたの?
なんて尋ねられて、ぽつぽつ説明してみてるけど…
ちょっと待って
あたし、酔っててあんまり頭回らないから、
余計なことまで言っちゃいそうで恐い。
司くんがあたしの頭をヨシヨシしながら尋ねてきた。
「それで?」
「…黙秘します」
「どうして?」
「…」
ふぅ、とため息をついて、司くんは質問を変えた。
「サツキさんさ。ホストに行ったときも、あんなかんじなの?」
「?」
「あのー。抱きついたり。するの?背中流してよ!とか、言うの?」
…するわけないじゃん。
あたしは少しイラッとした。
司くん自分が撒いた種なんだよっ!


