「ぅお疲れっしたー!!」
谷川が音頭を取って、乾杯。
初ワンマン、大成功!
俺、嬉しいよ。
バイト先でいつものようにやる打ち上げだけど、今日は特別に嬉しいなぁ。
本当嬉しいなぁ。
俺はニコニコとビールをいただいていた。
「お疲れさん!ライブよかったぞ司」
「あ!オーナー!見にきてくださって…ありがとうございます」
オーナーは感慨深げに俺を見た。
「おまえら、もう俺んとこのハコじゃキャパ少ねぇレベルになったなぁ。育ったなぁ」
「オーナー…」
俺ら、オーナーにはすごくお世話になってる。
プライベートなことから、バンドの運営まで、いろいろ。
CD出すときも、レーベルに口きいてくれたし、スタジオだって初ライブだって…
「オーイ!泣くなよ司」
オーナーは苦笑して俺の頭を撫でた。
「なんだ?もう酔っ払ってんのか?ダメだぞ、今日は深酒すんなよ」
「わかってますよー泣いてないし酔ってないですよ」
そう、今日は酔っちゃダメ。
明日、夕方からレコード会社の人と面談。
オーナーの大学時代の友達で、今はメジャーレーベルにいる人。
この前谷川と喧嘩になったけど、よくよく聞いたら。
仲間うちでインディーズレーベル立ち上げるから、俺らに興味持ったって。
オーナーも一枚噛むらしい。
そういう大事な話するから、今日の打ち上げは短時間で控えめにやる予定。
だから、サツキさんに待っててなんて言えたんだよ。
酔っ払ったら何時になるかわかんないもん。
「ところで、サツキちゃんはいないのか?打ち上げ」
ん?
「打ち上げってか…サツキさん、あれ以来ライブすら来たことないですよ?」
オーナーは首をかしげた。
「そうなのか?さっき似た女の子見たんだけど、雰囲気違ったから、自信なくて声かけなかったんだけど」
俺は断言した。
「人違いですよ。あの人、音楽に興味ないですもん」
「なんだ、そうなのかぁ」
オーナーは残念そうにしている。
好みとかあるし仕方ない。
うん。


