楽屋。
セッティング等準備を済ませ、後は開演時間を待つばかり。
はぁ…。
「どーした司?さっきからため息ばっか」
谷川が俺の顔を覗き込んできた。
「鈍感なおまえでも、さすがに緊張しまくり?」
鈍感って。
「緊張してる…はぁ」
ふぅ〜、はぁ…。
太田が可笑しそうに言った。
「ため息だか深呼吸だかわかんないな」
「はぁ…うん」
谷川は太田と顔を見合わせた後、また俺の顔を覗き込む。
…そんなに見るなよ、穴開いちゃう俺。
「司、まさか、悩み事?」
まさかって。
「悩み事か…はぁ」
谷川は心なしか目をキラキラさせながら、
「なんだ?どーした?大事なワンマンだぞ!すっきりして挑もうぜ!」
と俺の肩をバシバシ叩いた。
うーん。
「サツキさんが…」
谷川がすごい勢いで食い付いてきた。
「おお!サツキちゃんか!なんだなんだ」
太田も、
「ああ、噂の。で、どーした司」
なんか…嬉しそう?
まぁ、いいか。
「俺はなにもしてあげられないなと思って」
興味深々と顔にハッキリ書いてある二人に向かって、俺は思ってることをぽつぽつ伝えた。
サツキさん最近おかしい。
あの人はもともとおかしいんだけど、なんていうのか…
特に不安定なかんじっていうのか…
少しは俺に、心を許してくれたのかなと思っていたけど、
何考えてんのかさっぱりわかんない時もあるし。
今日だって急に…
泣くし。
俺、そんなにサツキさんがつらいことあったとか…
わかんなかったし。
元気づけたいけど、俺、サツキさんのこと、好きな食べ物しか把握してないし。
ホスト行って発散したいんだろうけど、俺は行って欲しくないし。
サツキさんが、俺が帰るの待ってるって言ってくれて、うっかり喜んじゃったけど、
そこまで口出ししていいのかな?俺。
サツキさんはサツキさんなりにストレス発散したいだろうに。
「なんだよ司。そんなことかぁ」
「そんなことってなんだよ谷川」
「ライブに呼べばいーじゃん。ストレス解消ならライブだろ!」


