「俺らが今やってること、谷川にとってはどーでもいいわけ!?」

「そういうわけじゃないけど…俺は音楽で食っていきたいんだよ!」

「俺はTKOでやっていきたいんだよ!なんだよ谷川、一緒にやろうって俺を誘ったのはおまえだろ!?」

なんだか子供じみたこと言ってるな、とは自分でわかってた。

「大体なんだよスタジオミュージシャンって。甘いよおまえ!馬鹿かおまえ!」

「司」

「もうっ。止めないでよ太田!」

「落ち着け」

「落ち着けないよ!そりゃね、バンドで成功するのなんて、難しいよ、わかってるよ!でも、やれることはやろうって、言ってたのおまえじゃん谷川!」

今思い出すと恥ずかしいくらい、俺は興奮していた。

「なんだよ、まだこれからだってのに、失敗した後のことまで考えて!谷川の馬鹿!」

俺は太田の手を振り払って、スタジオを飛び出した。


青い春ってかんじだねぇ…。

さっきまで、頭から湯気が出てるんじゃないかってくらい俺はカッカしていた。

喉がつぶれるほどやけ酒してやろうかと思ってた。

でも、サツキさんが俺らの曲のメロディー口ずさんでくれたとき、待ってくれてる人達もいるんだからヤケクソはダメ!って思えた。

ま、あの人は待ってくれてないけどね。

それでも、嬉しかった。

結局ちょっとだけシャンパン飲んじゃったけどさ。


冷静になれば、谷川のメジャー指向も、わかんなくもない。

手っ取り早く稼げそうなかんじ、するもんな。

博打っぽいけど。

あいつは、バイトとかしないでTKOのためにいろいろいつも走り回ってくれてる。

生活費はバンドの黒字分と、俺と太田のバイト代から出してるけど、だからかな、落ち着きたいって焦ってたのかもしれないなあ。

ちょっと、谷川におんぶにだっこな部分、あったからな。

よし、後で谷川にメールして謝ろう。


リビングに行くと、

「谷川!?なんでここ…」

言い終わらないうちに谷川がすっ飛んできて、

「つかさぁ〜〜〜!」

俺に抱きついてきた。

「ちょ、うぉ!」

勢いがつきすぎてて、俺は壁に頭を打ち付けた。