「久しぶり!」
「小雪!」
あたしは久々に小雪と会った。
いつもの喫茶店で、今日はカウンター席。
小雪はすごく元気で、顔を見るだけであたしはずいぶん気が晴れた。
どろどろもやもやした気持ちが、小雪と一緒にいるとくだらない事のように思える。
「あんた最近、出勤多いね、どうした?」
ウチの店はインターネットでプロフィールや出勤を掲載している。
小雪はそれを見たのだろう、心配してくれている。
あたしはそれだけで嬉しくなった。
会ってなくても、気にしてくれてたんだなってわかったから。
「ちょっと…しんどくて」
「?しんどいと出勤増やすわけ?仕事がしんどいんじゃなくて?」
「うーん」
何から話したらいいんだろう。
マスターがカップをあたしたちに出しながら、言った。
「あれ?今は彼氏と同棲で楽しいんじゃないですか?」
!?
彼氏!?
小雪は目をまん丸にして驚いている。
「ええ!?いつの間に!?」
「違っ…マスター!?」
マスターはいたずらっぽく笑った。
「この前、楽しそうに話してくれた彼と、うまくいってないんですか?」
「彼って!あたし、男とか言ったっけ…」
「いいえ。ただ、アイツとか言ってたから男の子かなと思っただけです。違いました?」
合ってますけど…。
マスター、小雪と一緒の時は、結構ずけずけ物を言うんだよね。
「なによ?詳しく話しなさいよ」
小雪にせっつかれて、あたしは説明した。
「ふーん…。バンドやってる男の子、か」
男の子、て言うと司くん、怒りそうだな…あたしはふふっと笑った。
小雪はそんなあたしをまじまじと見つめて言った。
「ほんと、楽しそうだね」
「いやぁー」
「そんで、なんで出勤が増えるわけ?別にたかられてるわけでもないのに」
「うん…」
マスターもうなずいている。
「真面目ないい子じゃないですか。僕がその子の立場だったら、思いっきりお金の面で頼りますよ」
「そうだよね、普通そうするよ」
「そんな困ってる風には…見えないし」