「そんなんじゃない」
んん?
「おまえなんかあっちいけって言って」
何言ってんの?
これ、何酒っていうんだろ?M酒?
「いや、ここ、サツキさんちだし」
むしろあっちいくなら俺?
ああ、俺にあっちいけって言ってるのかな?
「ごめんね?勝手に部屋に入って。起きたら声掛けて。ごはん作るから」
酔っぱらいには、何を言ってもお話にならないよ。
サツキさんはシーツにくるまって泣き始めた。
「優しくしないで…」
ん?
「あたしなんかに優しくしないで」
んん?
サツキさん、絡みづらい。
っていうか。
「あたしなんか、なんて言っちゃダメ」
俺はサツキさんをシーツの上からポンポンした。
「触らないで」
「すいません」
俺はまた凹んだよ。
もぞもぞとしながら、シーツは言った。
「司くんが、ダメになる…」
「ん?」
「あたしなんかの近くにいたら、司くんが汚れちゃう…触ったら、汚れちゃう…」
「何言ってるの?」
シーツは返事をした。
「一緒にいたらダメだと思うのに、一緒にいたいの」
ん〜???
酔っぱらいの言うことは、意味がわからないな。
えっと。
「サツキさん。俺、出てったほうがいい?家から」
ドカッ
シーツから足が出てきて、蹴られた。
「イッテ!なんなの!」
今度はシーツから手が生えて、俺の腕を掴んだ。
「一緒にいて…」
サツキさん、寂しいのかな?
「うん、いるよ」
俺は腕を掴まれたまま、ベッドの横にきちんと座り直した。
あ。
もしかして、あのホスト、帰したらまずかったのかな。
シーツからサツキさんは顔を出した。
涙で瞳が濡れている。
俺はあいている方の手でティッシュを取って、顔を拭いてあげた。
「司くんごめんね…」
「いいよ。ほら、ちゃんと寝なさい」
「うん」
俺の腕を掴んでいた手がぽとっとベッドに落ちて、サツキさんはそのまま寝息を立て始めた。
もう。
わけわかんなくなるくらい酔っぱらって。
酔っぱらいだし泣いてるから勘弁してあげたけど、起きたら説教だからね。


