「郵便物ためすぎだよ。郵便受けからはみ出しそうになってたよ?」
「だって…いらないもん」
「いらないじゃないでしょ?ついでに持ってくるから、勝手に開けるよ郵便受け」
買い物から帰ってきて、俺はテーブルの上に郵便物を置いた。
本当は叱りたいけど、サツキさん具合悪いから今日は勘弁してあげよう。
サツキさんは郵便物を全部ゴミ箱に入れようとした。
「ちょっと!ダメだよ!大事な手紙とか来てるかもしれないのに!」
おっと…つい強く言っちゃった。
「どうせDMばっかだよ」
「わかんないじゃん!」
サツキさんはしぶしぶ郵便物を見はじめた。
よっぽどどうでもいいらしく、ぞんざいに扱うから、はがきが一枚テーブルの上から落ちた。
俺は拾い上げて、何気なく宛名を見た。
「お友達あてのが、まだ来るんだね」
「?」
俺ははがきをヒラヒラさせて言った。
「安藤桃花様って」
「ああ…それ、あたし」
ん?
「サツキは源氏名。桃花は本名」
そうなの!?
「サツキさん、桃花さんっていうの!?」
「そう」
「可愛い」
「…ありがとう」
俺はサツキさんの顔を覗き込んだ。
「桃花さんか。うん、サツキさんに似合う」
「似合うって…変なの司くん」
確かに桃っぽいし。あ、花か。
…ん?
桃の花。桃の節句。
もしかして。
「サツキさん、3月3日生まれ?」
「そうだけど」
「あっはははは!単純!」
俺が爆笑したら、サツキさんは怒って反論してきた。
「別にあたしが自分で名前つけたわけじゃないから!」
「ああ、それもそうだね」
「司くんってやっぱり天然!ていうか変!無神経!馬鹿!あー、もうっ!」
なんだよ?
そこまで言われるようなことか?
俺はちょっとムッとした。
「司くんのバカ!おなかすいた!!」
そうか。
おなかすいてるからイラついてるんだね。
「はいはい、ちょっと待っててね」
俺はキッチンへ向かった。
サツキさん、子供みたいなとこあるよなあ。
サツキさんが桃花さんか。
うん。
いいじゃん。


