「ライブのあとぉ、打ち上げ、行ってね?」
「ああ、うん。今日も司くんがバイトしてるところでやったの?」
「ちっがーう。よそ。はじめて、いった」
「へぇ」
それが、どうしたんだろう?
「俺、嬉しかったぁ。料理、出してもらう側ぁ」
ああ、そういうことなのか。でもそれがどうしたんだろう。司くん変なの。
あ、酔ってるからか。
「だから、サッツキさぁん。俺、背中流してあげるよ」
「…はい?」
あたしは耳を疑った。
「俺、いつも仕事でしてることぉ、してもらって、感動したっ!」
司くんは、どろんとした動きであたしを見た。
「だから、サツキさぁん。元気ないから。俺が、してあげるから。感動して?」
「は、は、はい!?」
なななななな…何!?
「お風呂でぇ、背中、いーっぱい流してあーげーるっ。きっと、元気出るよぉ」
司くんは無邪気に笑っている。
ああ、背中…他意は、なさそうだ。
それでもあたしは充分度胆を抜かれたから、慌てて言った。
「いやいやいやいや。いいよ。いい。うん。気持ちだけで充分です」
「そうぉ?」
「そうそう」
「なーんだ。じゃあ」
司くんはあたしの顔をまじまじと見つめ、
ちゅーーーーーぅ
漫画みたいな音を立てて、あたしの頬にキスをした。
「元気の出る、おまじなーい。おやすみーぃ」
そう言ってゆらゆらと自分の部屋に入っていった。


