「司くんが一生懸命作ってくれてるから、このくらいは自分でやる」
だって。
俺は家政夫だから、そんなのいいのに。
でも、なんか、嬉しかった。
ある天気のいい日に、サツキさんの部屋のベランダに布団が干してあった。
ちょっと感心したのに、ライブ用のネクタイ忘れて19時頃家に戻ってきた時、まだ干してあった…。
慌てていたから、ネクタイをひっつかんで家を出るついでに、
「布団干しは15時まで!」
と手短にサツキさんを叱っておいた。
サツキさんが適当に指差して言った。
「あ、このドラム式のやつ可愛い。これでいいじゃん」
見た目の可愛さは二の次だよ。
俺は値段が可愛い全自動を指さして言った。
「ドラム式は予算オーバーだから、ダメです。こっちかこっちで、決めてください」
サツキさんはきっとこう言うだろう。
予算なんて、って。
「予算なんて…」
ほら言った!
俺はサツキさんの言葉を遮って決めつけた。
「予算は、洗濯機と電子レンジ、合わせて5万!」
「…どうして?」
「どうしても!」
先日、サツキさんがズレた金額を入れて寄越した「必要経費」の封筒から、出すことに決めていた。
それでもまだまだ、当分やっていけるよね。
サツキさんには節約とか、そういう観念は必要ないのかもしれないけど。
俺がいる間に、人並みの金銭感覚を身につけていただきます。
彼女からしたら、はた迷惑な話かもしれない。
でも、サツキさん。
今のままじゃ、彼氏ができたり結婚したりしたら、大変だよ?
…相手が。
それに、大事だよ?お金って。
サツキさんがどれだけ稼いでいるのかは知らない。
でも、今みたいに湯水のように使う癖は、よくないと思う。
…無駄に使うことを「湯水のように」と表すの、俺はあんまり好きじゃないけど。
だって。
水だって限りある資源だよ?
日本人は、水があって当たり前だと思ってるからこういう言葉があるんだよ、罰当たりだな。
…俺もバリバリ日本人だけど。
あ、そうか。
サツキさんも、お金があって当たり前と思ってるから、表現的にはぴったり?


