この子、天然?

そう思うとあたしもおかしくて、つい笑ってしまった。

「また、笑われた…」

「え?」

司くんはなんとなく恨めしそうにあたしを見て言った。

「さっきも笑われた」

ああ、そうだっけ。

遠くのテーブルから、

「司ー!サラダ早く持ってきてよ」

と大きな声が聞こえた。

「もう。俺今日は休みなのに」

司くんが席を立とうとしたら、

「あ、いいよいいよ。席に戻るついでに持って行くわ」

と、あたしに仕事の話を振ってきた女の子が、サラダを持ってテーブルを離れた。

それを機に、集まっていた人たちもばらばらと思い思いの場所に散っていった。


助かった…。


そこらへんに置いてあったウーロン茶を飲みながら、司くんはぼんやり座っている。

帰るタイミングを逃してしまったあたしも、黙ってビールを飲んで座っていた。

…。

鶴田さんと話していた男の子が素っ頓狂な声を上げた。

「あれっ、司!いつのまにそこにいたの?今お前のこと相談してたんだぞ」

「ん?」

ぼんやりと返事をした司くんを、鶴田さんがおかしそうに見ている。

「おまえは本当に存在が控えめだな。それにしてもそこ、お通夜みたいになってるぞ!なんか話しかけたらどうだ司」

司くんは困ったように、

「俺、アンケートの提出待ってるだけだし」

とあたしを見た。

…そうだったんだ。わかんなかった。

鶴田さんがさっきから話している男の子を、あたしに紹介した。

「サツキちゃん。こいつ、谷川。TKOのベースで、リーダー」

「初めまして、谷川でっす。サツキちゃん、よろしくおねがいしまーす!」

明るい人だなと思いながらあたしは頭を下げた。

「よろしくお願いします」

「で、二人して俺の何の相談してたわけ」

司くんがあたしの隣に座ったまま話を二人に振ったので、

3人に挟まれた形になってしまったあたしは、黙って話を聞いているしか無くなった。