ももいろ


俺はベッドの傍に、また正座した。

「サツキさん。俺今から変なこと聞く」

サツキさんはあーあという顔をした。

うん。

でも俺、サツキさんが思ってる以上に変なこと聞くからね。

「なんで美容師辞めちゃったの?」

サツキさんは深いため息をついてうつむいた。

やっぱり聞かれたくないんだ、ごめんね?

嫌なことは一度に終わらせよう。

俺はさらに質問した。

「なんで風俗なの?どんな気持ちで仕事してんの?職人みたいなセックスって何?」

サツキさんはテカテカの顔を思いっきり俺に向けて、口をパクパクさせている。

「えぇっ!?」

「俺、気になる。真剣だよ、だから教えて」

「…」

長い沈黙。

サツキさんは俺が今まで見た中で、一番の無表情になっている。

「大丈夫だから」

俺は自分でよくわかんないけど、そんなことを言っていた。

サツキさんはぽつぽつ、話しだした。

「友達に…ひどいことしたから逃げたくなって、美容師辞めてこっちに来たの」

「ひどいこと?」

サツキさんは能面のような顔で教えてくれた。

「仲良くていつも一緒にいた友達の、彼氏を好きになって、何回もセックスした」

…。

意外。

「サツキさんってそういうゴチャゴチャしたの、メンドクサがりそうなのに」

「知らなかったの、サキと店長がつきあってたの」

サキってお友達かな?

店長って…美容院の?

なんとなく読めてきたような。

「そうか。じゃあ、サツキさんもショックだったね?」

サツキさんは少し顔を歪めた。

「…そう。サキは何も知らずに店長と結婚して、無事出産して、幸せになってほしい…だからあたしはいなくなろうなんて、サキのせいにしてたけど」

えっ?

結構本気でゴチャゴチャしてたんだな…。

「けど?」

「…」

サツキさんの顔からまた表情がなくなった。

「大丈夫だから」

何が?とか突っ込まないでね。

「あたし、ショックだった。サキに悪いなんて思ってたけど、どうして言ってくれなかったのとか、店長に片思いしてるあたしを見下してたのとか、嫌なこと考えた」