「これ、髪切るやつ?」
「あ…うん、そう」
美容師さんが持ってるのみたいだな。
「明日貸して?」
振り向いたら、サツキさんは首を傾げている。
「いいけど…司くん、髪自分で切るの?」
「うん。邪魔になってきた」
ハサミをドレッサーに置いて、サツキさんに薬を渡した。
「ありがとう」
サツキさんは適当に塗りはじめた。
ムラだらけで見てるともどかしい。
俺が塗ってあげたいけど、今はやめときます…。
白くてテカテカな顔になったサツキさんが聞いてきた。
「いつも自分で切るの?髪」
「んーん。初めて」
白い顔の人は、
「ええ?やめときなよ、変になるよ。あたしが切ってあげようか?」
と言った。
「えー?やだ!変な頭にされそう」
テカテカはムッとして口を尖らせた。
「司くんが自分で切るよりマシだよ」
プッ。
面白い顔。
もうちょっとからかってみよ。
「やだ。サツキさんものすごい不器用そうだし」
テカテカはフグみたいにふくれた。
「あはははは!」
「失礼な!あたし元美容師なんだからね!」
え!
「そうなの!?」
びっくり!マジで?
サツキさんは一瞬しまった!というような表情になった。
なんでそんな顔するの?
すごいじゃん。
「サツキさんが美容師かぁ…いいじゃん」
「何よ、不器用とか言ったくせに」
「冗談だよ。じゃあお願いしちゃお、よろしくね?美容師さん」
「…まかせてよ」
とは言ってるものの、サツキさんは暗い顔になった。
見て見ぬフリをするほうが優しいのかもしれない。
でも、俺はサツキさんのこと知りたい。
サツキさんの今してる顔は、初めてライブハウスで見た時と同じ顔。
腫れてるとか薬でテカテカなのは置いといてね?
そうだ、思い出した。
俺は初めて君を見た時から、何考えてんのか知りたかったんだよ。
教えて?君の、つらいこと。
俺に八つ当りしてもいいから。
気が晴れたら
笑ってね?


