ふんっ!

意地悪してやった!


俺は鼻息荒く氷を冷凍庫から取り出した。

だいたいしつこいんだよサツキさんはネチネチネチネチと!

大事イコール好きなんて、短絡的!

小学生か!?

結果、



俺はサツキさんのことが好き



と何度も自分で連呼してたことを恥じるがいいさ!

バーカバーカあっははははは!

俺は勝ち誇った気持ちで新しい氷水を洗面器に用意した。

俺に出てけなんてひどいこと言ってさ。

凹むっつーの。

…あれ?意地悪されたの、俺?

いやいや!

くっつけだなんて、アナタが相手なんですけど!

違うって言ってんのにさ。

それにどーすんの?くっついちゃったら出ていかないよ?ぶはははは!

人の話を聞かないからややこしくなんの!

まいったかざまーみろ!

さーて、可愛くない人は反省したかな?

どーせまたわけわかんないこと言ってからんでくるんだろうけどさ。

俺はサツキさんの部屋に向かった。

「入りまーす」

ぎょ。

サツキさんは電池が切れたように、ベッドに座ったまま固まっていた。

「サツキさん…?」

声をかけるとサツキさんは、腫れぼったい目を見開いて、

「あ、わっ!司くん!」

パッと俺から目をそらして、シーツをつまんだり離したりしている。

…あのー。

何、その予想外のリアクション。

「司くん…な、何…?」

辞書に「もじもじしている人」て項目があったら、今のサツキさんの写真載るよねってくらい見事なもじもじっぷり。

「何って…氷」

「ありがと…」

「うん…」

「…」

「…」



やりづらい!

何、この雰囲気!



俺はギクシャクとタオルを濡らしてしぼった。

サツキさんはそれをギクシャクして受け取り、ベタッと顔を覆ってしまった。

…きーまーずーいー!

と思ったけど、なんとなく部屋から出ていけなかった。

「司くん…」

「は、はい」

俺は正座した。

「初めてなの」