「ただいま…」

「な、な…」

これ…サツキさん?

「かゆい…」

声はサツキさんだ。

顔が真っ赤に腫れあがって、目が半分くらいの大きさになっちゃってる。

俺はサツキさんの顔を覗き込んだ。

「どうしちゃったの!?一体…」

サツキさんは細くなった目で俺を一瞥し、

「どいてよ。部屋いくんだから」

顔をボリボリかきながら俺を押し退けようとした。

「ちょっと!」

俺はサツキさんの腕を掴んで引き止めた。

「顔!かいちゃダメでしょ!てゆーか何があったのさ?どーしたのそれは!何してたのこんな時間まで」

よく見ると、手も赤くなってる。

じんましん出てる?

一体何が…

「うるさい。触らないで」

サツキさんは俺の手を乱暴に振り払って自分の部屋に引っ込んでしまった。

俺は凹んだよ。


うるさいって。

触らないでって。


いや、今までも言われたことあるけど、今日はなんか違う。

サツキさん酔っ払ってないのに。

昨日、寝る前はいいカンジだったのに…


まさか。



サツキさんが寝てるときにキスしたの、バレた?

いや、下心ナシだよ?

サツキさんなら平気なんだぁ不思議だな俺〜、て純粋な好奇心!

可愛いいたずら!

…そのせいでじんましん出てる?



俺はサツキさんの部屋のドアをノックした。

「サツキさぁん!あの…イテッ」

乱暴にドアが開けられ、俺の顔に思いっきりあたった。

「ああごめん」

サツキさん、恐い。

「うん…。あの、サツキさん、どうしたの?じんましん。俺のせい?」

サツキさんは顔をかきながらため息をついた。

「はぁ?何言ってんの?」

ウッ。

違うのかな?バレてない?

じゃあどうしたんだ?

ていうかこの態度は何?


ていうか…

「血!サツキさん、顔から血が出てる!」

なんでこんなことになっちゃってるのこの人!

大変だ!

「病院、行かないと!このへんで夜間やってるとこは…」

「いいって。慣れてるから」

は?

慣れてる?

「猫アレルギーが出ただけ」