俺は意を決して玄関を開けた。
「たっだいま!サツキさぁん、聞きたいことあるんだけど!」
…て。
いないじゃん。
なぁんだ…。
俺はリビングのソファに倒れこんだ。
気合い入れて帰って来たのに。
俺、決めた。
わからないから悶々とするんだよ。
たとえば、職人みたいなセックスって何さ!?とか。
どんな気持ちで仕事してんのさ!?とか。
ん。
大きなお世話と思うよ。
聞かれたくないだろうなとも、思う。
でも知っておきたいんだよ。
だって俺、悶々としたくない。
セックスはもうしない。
…当分。多分。
だけど、俺だって人間です、健康な成人男子です。
たまるわけ。
今日の調子じゃ、俺エロビデオ見ても凹むかもしんないじゃん?
聞いたところでサツキさんの仕事は変わらないけどさ。
もしかしたら俺もっと凹むかもしんないけどさ。
知りたいんだよ。
サツキさんは何考えてんのか。
俺の勝手で変なこと聞いたら、サツキさん怒るかもなぁとかいろいろ悩んだけど。
むっつりといろいろ想像するより、爽やかに聞いちゃえ!って決心したのに…
いないんだもんなぁ。
あの人、こんな時間にどこ行ってんだろ。
日付、変わるよ?
俺はサツキさんに電話してみようと思ったけど…
「あ」
そうだった。
ケータイ、知らないんだった。
いつも俺が帰ってくるとサツキさんがいるから、連絡先とか気にしたことなかった。
俺にとって当たり前なんだな、サツキさんがいることは。
…まあ、サツキさんちなんだからサツキさんがいるのは当然なんだけどさ、そうじゃなくて。
そこは空気読んでね?
さて…シャワーでも浴びとこっかな。
いや、さっきも浴びたけどなんとなく。
俺は決意が折れないように身を清め(?)気合い入れまくりで待った。
それにしても遅い…
何してんのあの人。
イラついてきたところに、玄関で物音がした。
帰ってきた!
玄関まで走っていき、
「ぎゃあ!」
俺は悲鳴をあげた。