しばらく他の話題で盛り上がっていたけど、あたしはやっぱりおなかの調子があまりよくないから、先に帰ることにした。
「酒が残るようになったねー。年だね桃花」
なんて小雪が笑ったから、あたしは少しすねて文句を言ったけど、たぶん違う。
この感覚は、あの時と似てる。
きっと、司くんは特別じゃない普通の男だって、わかりたくなかったんだなと解釈した。
そういう予感がしてたんだ、きっと。
あたし嫌な女だなぁ。
司くんは何もしてないのに、勝手にがっかりしてごめんね。
あたしは一人お店から出て、少し後悔した。
そうだ、ラブホ街のど真ん中だった…
遅い時間にここを一人で歩くのはちょっと気が引ける。
そわそわキョロキョロとあたりを見回すと、やはりカップルだらけだ。
あぁ、やだなぁ…
そう思ってると、新しめのホテルから男の子が一人、出てきた。
やっぱりここ一人で歩くと目立つな…
ん…
あれ…
司くんじゃん
あたしは茫然と立ち尽くした。
司くん
ー終わるとさっさと帰っちゃうらしいよ
司くん
あたしは必死に平静を保とうとした。
別に…
あたしが勝手に好きなだけだから
司くんが
何してたって
関係ない。
あたしは
ただの
同居人だから…
ー司くんは桃花を大事にしてると思うよ
違うよ小雪
興味がないだけだよ
好きになってくれたらいいななんて考えたことなんてない
あたしと司くんは別世界の人間で
夢に向かってがんばる司くんはキラキラしてて
一緒にいられて嬉しいなって思ってただけ
だから
泣くほどショックを受けることじゃないよ
こんなの
当然だ
あたしなんて
司くんの
眼中になくて
当然だ


