「そうよぉ!あたしと一緒に暮らしはじめた頃なんか、顔合わせてもあいさつくらいしかしないし、死人みたいな顔してたわよ」

小雪はピザを口に運びながら続けた。

「あたしが無理矢理外に連れ出すようになっても、全然楽しそうじゃなかったし。最初、心が壊れてるのかと思ったよ」

小雪は淳子さんから話を聞いていたらしく、いろいろと世話をやいてくれた。

最初はそれすらも煩わしくてそっけなくしてしまったけど、小雪は我慢強くあたしが打ち解けるのを待ってくれた。

「へえ、そうだったのか。どうやって仲良くなったの?」

コウジさんが小雪に聞くと、小雪は一瞬ニヤッとして説明した。

「酔わせてみよう!と思ってホスクラに連れてったのよ」

ああ…

あたしは恥ずかしくなってうつむいた。

「桃花、酔っ払って泣き始めてさ。思ってること吐き出すのはいいんだけど、あたしなんかいないほうがいいんだぁなんて言いながら店飛び出して、非常階段から飛び降りようとしたのよ」

コウジさんは驚いた顔であたしを見た。

「ええっ!?それは迷惑な」

「そうよぉ。あたしとホストで必死で止めてさ。今は笑えるけど、あの時桃花本気だったから大変だったわよ」

そう、あたしは小雪やホストを突き飛ばしたりして必死で抵抗した。

「死なせて!邪魔しないでよ!ってさ。びっくりしてビンタしちゃった。ねぇ桃花」

「ごめん…ありがとう」

あの時、あたしの頬をぶった後、小雪は泣きながら怒ってた。

辛いのはわかるけど死ぬのはあまりにも勝手だって。

嘘つかれたまま死なれたらおうちの人が可哀相だって。

事実を知った時の友達の気持ちも考えろって。

あたしはそれから、小雪に対して構えた気持ちがなくなって、何も考えないように生活できるようになった。

「へぇ、大変だったなぁ。今の桃花ちゃんは、もう大丈夫ってことかな」

「いやー、でも酒癖は悪いよね!司クンも大変だぁ」

小雪は声を少し小さくして、

「こんな素直じゃない女は押し倒して黙らせちゃえばいいのに」

と言った後カラカラと笑った。