ももいろ


「まあまあ、大丈夫?」

心配そうにおしぼりを差し出してくれる浅田さん。

「桃花ちゃん、少しは落ち着いてきた?」

20代後半くらいかな、落ち着いた色気を感じるけど、初めて会うおかしなあたしに気さくに接してくれる淳子さん。

「何があったのか、聞いても大丈夫かしら?」

「また泣いてもいいからさ、全部言っちゃいな?少しは楽になるかもよ」


あたしは、店長と早紀というのは伏せて、少しずつ話した。



「何その男!サイッテー!死ねばいいのに!」

淳子さんは、おしぼりをテーブルに投げ付けて怒っている。

「こら淳子。死ねなんて言っちゃダメよ」

「だって!ムカつく」

淳子さんのあまりの剣幕に、あたしはつい言ってしまった。

「でも、あたしが悪いんです、彼女いるって知ってたのに…」

淳子さんはため息をついた。

「桃花ちゃん、バカねー!そんな意味わかんない男にタダでやらせるくらいなら、風俗でお金もらったほうがマシじゃない!もったいない!」

「こら、淳子」

「だって!」

風俗…

あたしはおかしくなった。

「あははははは」

いつでもタダでできる手軽な女。

店長にとってあたしなんて、風俗嬢以下じゃん。

でもそれを望んだのはあたし。

「あははは、バカみたい。ホント、もったいない。あはははは!」

「桃花ちゃん…」

あたしはまた泣けてきた。

「彼が、誰でもいいからヤリたかっただけなの、わかってます。あたしはそこを利用したんだから。あたしなんてそれだけなんです、彼にとって」

「桃花ちゃん」

淳子さんがあたしの肩を抱いた。

「どうしてもっと、自分を大事にしないの?たまたまソイツがバカなだけで…」

「好きだったんですぅ」

あたしはまた声をあげて泣いてしまった。

淳子さんは最初黙ってあたしを抱き締めていたけど、ぽつぽつ語りはじめた。