「早紀、心配したよ!起きられるんなら、メールくらいしてよ」

あたしは、早紀の顔を見たら安心して、つい文句が真っ先に出てしまった。

「うん…ごめん」

早紀はあたしから目をそらした。

気まずいのかな?

恥ずかしいのかな?

それでもあたしは、一人で喋り続けた。

「これ、みんなから!」

早紀の好きなバウムクーヘンを買ってきた。

「少しは日持ちするから、と思ったんだけど。早紀、しばらく食べられそうにないかな?」

「うん…わかんないけど、今は無理」

うつむいたままの早紀に、あたしはソワソワした。

おばさんの言葉から、なんとなくわかってたけど、

そんな大事なこと、早紀の口からちゃんと聞きたい。

仕事辞めて、おばさんもなんだかうれしそうで。

おめでたいことなんだ。

早紀、早く聞かせてよ。

おめでとうって言いたい。

彼氏居たのすら知らなかったから、少し寂しいけど、

そんな文句は後で笑って言えばいい。


早紀が黙ったままだったから、あたしは催促した。

「ねえ、早紀、あたしに何か、言うことあるんじゃないの」

あたしの朝の嫌な予感なんて、気のせいだった。

早紀が仕事辞めちゃうのは残念だし寂しいけど、

お祝いしてあげたい。

先輩達も、びっくりするだろうなぁ。

「桃、あたしね」

「うんうん!」

「妊娠、してるの」

きゃあ!

「おめでとう!早紀!もう、すっごく心配したんだから!早く教えてよ、そういうことは」

早紀は申し訳なさそうにあたしを見た。

「ごめん、桃。言いづらくて…何回か、言おうと思ったんだけど」

早紀の顔が暗いのは、あたしに言いそびれた申し訳なさからだ。

あたしはそう解釈した。

「もー。あたし、早紀に彼氏が居たのも知らなかったよ。寂しい!で?どんな人なの?結婚するんだよね?」