「桃花ちゃん、ネックレス、してくれてるのね。凄く似合うわ」

浅田さんが鏡越しにあたしに微笑んだ。

「はい、毎日してます!すごくお気に入りです、ありがとうございます!」

浅田さんは、今年の1月からうちのお店に来てくれるようになったお客さん。

自分でスナックを経営していて、なかなか繁盛しているようだ。

30代半ばとは思えないくらいあか抜けてて、綺麗な人。

こういう大人になりたいなって、いつも思う。

浅田さんがお店に初めて来た時、たまたまあたしが空いてて、カットを担当させていただいたんだけど、そのままあたしを担当にしてくれた。

以前通っていた美容院の担当さんが寿退社してしまい、他の担当さんではいまいちしっくりこなかったんだって。

あたしは、最初浅田さんがあまり話しかけて欲しくなさそうにしていたので、

必要以上に話しかけずにカラーをしていたら、そこを気に入ってくれたらしい。

それから何回か来てくれるようになって、だんだん打ち解けて仲良くさせてもらってる。

普段はワンピースやスーツでお店に出てるらしいけど、

気が向いたときはドレスや着物を着るそうで、その時のセットもあたしに任せてくれる。

ワンパターンにならないように、TVや雑誌で猛勉強して、今の流行と浅田さんの好みを考えていろんなバリエーションができるようにしていたら、

「桃花ちゃんにセットしてもらうのが楽しみで。ドレスの日が増えちゃったわ」

なんて言ってくれた。

あたしのお誕生日には、浅田さんはわざわざトリートメントだけしに来て、お誕生日プレゼントね、と言ってすごくステキなネックレスをくれた。

あたしの宝物。


浅田さんは店内を見渡して、

「あら、早紀ちゃん今日はお休みなの?」

と言った。