秀さんの発言が予想外だったのか、今度は石山くんがきょとんとしていた。


「あの…さ、規則破ってるヤツが言うのもなんだけど、うちの学校はピアス禁止だよ」

「らしいね。でも開けちゃったものは仕方ないよ」

「……変なヤツー」


石山くんは笑いながら、新しい飴を開けて舐めはじめた。


「楓っち、明日は学校行くから。ゆきちゃんに言っておいてー」

「え?…あ、うん。分かった」


そうだ、石山くんは携帯持ってないんだった。

返事をすると、手をひらひらとさせながら去っていった。


「先生、気に入られたみたいだよ」

「え、そうなの?」


石山くんは自由主義だから、自分のすることに口出しする人が嫌いらしい。

だから、注意されると分かっている事をあえて受け入れてくれた秀さんには、好意を持ったみたい。


「でもやっぱり……軟骨でも痛くないのかなぁ」


秀さんはそこばかり気になっていたようで、自分の両耳を押さえて「ぞわぞわするー」と言って笑った。