抱きしめていた美葉の身体を引き離し傘を渡して、さよならと小さい声で別れを告げる。茫然と立ち尽くしてる侑一を素通りし星流の真っ赤な傘と借りた黒い傘を閉じて走り出した。
ずぶ濡れになりながら走る。雨が顔に当たって痛い。濡れた空色のシャツがべったりと引っ付き気持ち悪い。
星流けっこう足速いんだよな、なんて思いながら角を曲がった。息を弾ませながら開いてる門を真っ直ぐ進むと―
うずくまって泣いている星流。傘を握りしめゆっくりと近付く。俺の気配に気付きピクッと肩を震わせた。

『忘れ物、はい』

足元に2本の傘を置いた。動こうとしない星流。

『…早く風呂入れよ。風邪ひくぞ』

踵を返して帰ろうとしたら
腰に重みを感じた。

【猛のうちに連れてって…】