ティッシュに涙と少しの残骸

【えっ!?なっ…なんで?】
『春は変質者が現れる時期だろ~。此処は暗いし、いざとなったらすぐ走れるように念のためだって』

あぁ、なるほどと納得してくれたので軽く握っていた手をきっちり繋いだ。なんか妙な気分なのは多分星流も同じだろうと思いたい。
いつもと違う空気の中ふたり無言で歩く。サイズ違いの足が同じ歩幅で歩く。やわらかい暗闇の中、足音が重なる。しばらくしてから星流が口を開いた。

【ここだよ。どうぞ】

玄関を開けて招き入れてくれたが俺ん家がすっぽり入っちまうくらいのでかさに先ず驚く。

『お邪魔します…』

床のフローリングはピカピカで品よくスリッパが揃えられている。どこもかしこも見た事ない物だらけで俺はおどおどしながら階段を昇る。階下から星流が

【一番奥の部屋だから。ちょっと待っててね】

と俺を置き去りにして何処かへと行ってしまった。とりあえずドアの前に立ち星流が来るまで待つことにした。