ワンッ!


土手に座り込んで脚を広げ身体を真ん中に折り畳むようにしてうなだれてたらちー助がぐいぐいとシャツの袖をくわえて引っ張る。

『ん?もういいのか?腹でも減ったか?』

ちー助のよだれで少し濡れた白地に紺ストライプシャツの袖のボタンを外してまくった。
夕暮れ時の茜空に鰯雲が微妙なグラデーションを映している。太陽がオレンジから燃えるような赤に変わりながらゆっくりと落ちながら今日最後のあたたかさを伝えてくる。
突然、ちー助が走った。リードを外したままだから慌てて追いかける。もし自動車やトラックにでも轢かれたら、と思うと気が気じゃない。

『ちー助!!おい!』

俺の声に全く反応せず猛スピードで走っていく。