ティッシュに涙と少しの残骸

『おっ♪今日はすき焼きだ。星流ラッキーだったな』

電気をつけて居間へと移動して嬉しそうに私に話しかける猛。私はちー助を抱いて玄関に座ったまま動けない。

『風邪ひくぞ?早く食おうぜ―』

お肉を焼いてる音が聞こえてきた。ピンクのスニーカーを慌て脱いでキッチンへ走った。

【換気扇つけなきゃダメじゃん】

カチッと紐を引っ張る。振り向いたらちー助が後ろについてきてたのがなんだか嬉しくなった。

『来いよ、肉なくなるぞ』

材料を鍋に入れてる猛に断りを入れてケータイを取り出し家に電話をかけたら留守電だった。遅くならないうちに帰るよ、とメッセージを吹き込んだ。

【ごめんね】

居間に侵入してコートを隅っこに置いてこたつに入る。こたつなんて久しぶりだなぁ。小さい頃の曖昧な記憶しかないや。
ふと猛の視線に気付いた。温かな鍋の湯気の向こうのふたつの目は私の身体をまじまじと眺めていて少し怖くなって身体を両手で抱えて庇う。