ティッシュに涙と少しの残骸

母さんから入学祝いで貰ったアディダスのスニーカー。嬉しくて嬉しくて入学式まで俺の部屋に飾っておいたっけ。
高校生活が始まった時期、兄さんは親父の病院で仮実習生として大学が終わってから毎日足蹴に通っていた。

『母さん、兄さんまた病院?』
「そうよ、今日から夜勤に入ったから戸締まりと将のこと頼むわよ」

エプロンを外しながら将の頭を撫でCHANELのバッグを持ち玄関から出て行く。当時10歳の将は生意気盛りで、でもまだ甘えたい気持ちもありちょっと難しかった。

そんなどこにでも有る日常が壊れるなんて
あの時は微塵も思わなかった、考えられなかったんだ…

だってそうだろう?みんなは何気なく過ごしてる毎日がずっと続くと思って生活してるんだからな。
誰だってそうだろう?

もしも
万が一
なんてそうそう有りっこないもんな。