ティッシュに涙と少しの残骸

当時中学受験真っ只中の俺にわかり易く勉強を教えてくれてた。自分は医大生に成り立てホヤホヤで学ぶべき事は山ほど有ったはずなのに、俺に付きっきりであれこれ丁寧に教えてくれた…


『兄さん!俺受かった!!合格したよ!』

玄関のドアもろくに閉めずナイキのスニーカーを吹っ飛ばしてドタドタと階段を上がる。ノックもせずに乱暴に部屋のドアを開けたけどその音すら気付かないくらいに集中している兄さんの背中はちょっと余裕がなかった様に感じられた。

『に、兄さん…?』

俺の呼びかけにはっと顔を上げ振り向く。

「どうした?」
『俺…合格したよ』

にっこり笑っておめでとう、と言ってくれたけどその笑顔はどこかすっきりしていて、まるで厄介払いでも終えたかの様に見えた。
あの時は気のせいだと勘違いしていたんだ。