執事と共にお花見を。

「ワシは、家内を責めた。何故目を離したのかと、ずっと責め続けた」


毒を吐くような告白。


「けれど、あれは黙って受け入れていた。時には、微笑さえ浮かべて、ワシの罵声を浴び続けた」


恵理夜の眉も、辛そうに寄せられる。


「ワシが、受け入れられなかったのだ。そして、いつしか微笑みながら、いつもの生活を送るあいつに腹が立っていたのかもしれん」


そうではなかった、と老人も理解しているのだろう。


「ある日の昼休み、同僚が子供と週末に遊びに行くと話しておってな。ワシが羨ましそうな顔をしておったんじゃろうか、目が合った途端、その同僚は口をつぐんだ。だが、そのタイミングでな、家内がやってきた」

「どうして……?」

「ワシが忘れた弁当をわざわざもって来てくれたんじゃ。慌ててきたせいか、サンダルのままでな。それが、ひどく情けなく思えての。ワシは怒鳴りつけた」

「…………」

「けれど、あいつは丁寧に謝って、それから微笑んだ。……その笑みを見ての、ワシはついに言ってしまった」


お弁当を、届けて、彼に尽くしているのに、それでも、浴びせられる罵声――


「お前が、殺したのだと」