「せっかくなので、桜の香りのする緑茶を容れてみました」


うっとりするような濃厚な桜の香りがする緑茶だった。

恵理夜は、それを口にすると立ち上がった。


「もう、お出かけになるのですか?」


時刻は7時20分。

恵理夜の登校時間までは1時間ほど余裕がある。


「せっかくだから、お花見をしながら行きたいの」

「では、このお茶を魔法瓶にお入れしましょう」

「一緒に行かない?」


春樹は、一瞬驚いたように目を見開く。